ITvs放送 次世代メディアビジネスの攻防―変わる放送、ネット連携の行方

「放送と通信の融合」に関わる各プレーヤー間の綱引きは現在進行形で進んでいる。特に竹中氏が総務大臣になり昨日も首相自ら「NHK縮小路線」を喧伝しているように加速した状況。先日のICPFでも再確認されていたように「通信と放送の融合」はフリーライドなどの問題を孕みつつ進み、数年もすれば僕達を囲むメディア環境は一変している可能性が高い。この本は日本の神経系がどういう風に換装されようとしているのかを各業界にいろんな意味で目配せをしながらまとめたもの。

テレビ局側は、いずれくるIP再送信などを含めた放送・通信統合時代までの間に自分達のアドバンテージと権利を守っていくために戦っているのにすぎないのであって、別に通信事業者とのアライアンスを嫌がっているわけではないのである。NTTの場合には法改正をしなければ放送事業との統合は出来ないが p211

この現状認識に関しては完全に同意。もちろん放送局側が「コンテンツ」と呼ばれることを生理的に嫌悪しているってのも結構大きいかもしれないけど、現実的にはそうなんだろうなと。
もちろん細かく言えばん〜・・・・となる点もある。一つ目は「スキルのある局ディレクターは会社を買っただけでは手に入らないし、育成するにも凄いコストかかりますよ」って話。これは買収の大筋には関係ないと思う。会社出てったって、映像で食って行くしかないんだから、プロダクションに移って前よりも安いコストで仕事をするようになるだけだと思う。もちろん局側は空洞化するけど、それって今もあんまり変わんないんじゃないかと。むしろ多メディア展開で収益構造を変えられるようなプロデューサ数を増やす方が重要だと思う。
また、2章と3章で主張が食い違っているようにも感じないことも無い。2章のNHK受信料問題に絡めて、無料地上波が無くなる事を危惧しながら、ペイTVはもっとがんばれというあたり。またそもそも無料地上波が無くなる事が利用者の不利益としているけどその根拠が薄弱。米でさえ、半数近くは無料地上波なんだから別に無くなりはしないだろうし、そもそも欲しいと思う物は金を出して買うのが普通なわけで。
まあここら辺が池田氏に「御用アナリスト」呼ばわりされる原因なんかも知んないけれど、これだけプレーヤーが入り組んだ現状を初心者向けの一冊にまとめているだけでも凄いことだと思う。去年のフジ対ライブドアの際に堀江氏が提示した「放送と通信の融合」という金科玉条とそのプランのあまりの幼稚さに笑っていた人(もちろん私もその口)はこの本を読んで現状がどうなっているのかを知っておくと、次の挑戦者が出て来た時の真贋判定が出来るかと思う。
(追記)著者の西正氏のブログみたらなんか荒れた後だった・・・・関係無いけど、池田氏も山形氏と揉めてた事あったなあ・・・こういう大人気無い感じは大好きだ。
(さらに追記)ITproの特集

ITvs放送 次世代メディアビジネスの攻防―変わる放送、ネット連携の行方
西 正
日経BP社 (2005/10)
おすすめ度の平均: 5
5 ベストタイミング
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